コーティングとリセールの関係
新車を買う時はディーラーからボディコーティングを強く勧められるものです。
実際に新車購入時のボディコーティング施工率は非常に高く、著者の知り合いが店長を務めるディーラーでは約90%になるとのことでした。
やらないよりやった方がいいことは明白ですが、料金に見合った価値はあるのでしょうか?
営業マンからは「ボディコーティングをしておけば売る時に高くなる」などのセールストークが定番で、ボディコーティングしたのに外装の劣化が早いなど不満を抱くケースも少ないです。
しかし、業界人の視線から見ると価格に見合った価値はなく、新車時のボディコーティング施工だけで売る時の価格が大きく変わるケースは滅多にありません。
新車時に行うボディコーティングの相場は4~7万円ほど。車の大きさやコーティングのランクによっては10万円を超えることもあります。
少なくても著者が新車を買う時は、大金をはたいてまでボディコーティングをしようとは思いません。
ボディコーティングの効果
車の塗装は主に雨と紫外線の影響で劣化します。
コーティングなど外装のメンテナンスを何もしない場合、時間の経過とともに塗装の色褪せや雨染み、洗車傷などの小傷で外装の状態が劣化していきます。
ただし、こうした塗装状態の劣化防止は、市販のワックスやポリマースプレー等でも対処できます。
手軽な外装メンテナンスに比べたボディコーティングのメリットをご覧ください。
正しくメンテナンスすれば持続期間が長い(1~5年)
正しくメンテナンスしていれば汚れを弾く性能が高い
プロが施工しているため、コーティングにムラがない
手作業で塗布→乾燥→拭き取り(磨き上げ)するワックスをかける必要がない
ここでポイントになるのが、ボディコーティングは正しくメンテナンスする重要性が高いことです。
コーティング効果を年単位で持続させるには、小まめな手洗いシャンプー洗車を行い、コーティング時に配布されるメンテナンス剤と専用クロスで手入れすることが求められます。
ボディコーティングをしなくても手洗い洗車+液剤・WAX等を使ったメンテナンスを小まめに行っていれば、相応の塗装状態を維持することが可能です。
持続期間
ボディコーティングは商品・プランによって持続期間が変わり、主に1年・3年・5年の持続期間を明記した商品・サービスが主流です。
新車時は持続期間3年のプランが人気で、中古では持続期間1年プランの需要が高くなります。
5年など長い方が1年あたりのコスパが良くなりますが、新車の5年や中古の3年以上はコーティングの厚みがありすぎて、施工後に一部のコーティングが剥がれるトラブルが多いです。
また、施工後にメンテナンスを何もしない場合や、ガソリンスタンドの洗車機を使って手入れした場合、5年コーティングをしても持続期間は1年も持ちません。
持続期間は施工後のメンテナンス状況で変わることと、表示されている持続期間は小まめに適切なメンテナンスを続けた場合における最長期間の目安であることを覚えておきましょう。
リセールの差
車を売る時の査定価格は外装の状態が大きく関係します。ボディカラーや車種によって変わってきますが、年式や走行距離の条件が同じでも外装の状態によって数十万円以上の差が出ることも珍しくありません。
査定時や業者用オークションで評価点を付けられる際に、もっとも重視されるのが外装のツヤです。
紫外線によるダメージや雨染み、洗車傷等のある車は必然的に艶も失ってしまうため、塗装のダメージを守るボディコーティングは艶の維持に繋がります。
ただし、よほどずさんな管理をしない限り、3~5年程度で外装の状態に大きな差が出ることはありません。
代替サイクルが5年や7年の場合、ボディコーティングを繰り返して総額10万円以上を費やしてしまうとリセールで回収するのが困難です。
新車時の施工のみでも多少の違いは出てきますが、ボディコーティングの効果が切れた後のメンテナンス状態が悪ければ、相応の劣化と査定減点を受ける状況へ陥るので注意しましょう。
塗装とお手軽メンテの進化
初度登録が昭和もしくは平成初期の車は、経年劣化で外装が極端に色褪せた状態になり、最悪のケースでは塗装(表面のクリア塗装)が剥がれてしまいます。
こうした劣化の著しい車を見た経験がある理由で、新車のボディコーティングを施工する方が多いのではないでしょうか?
新車や高年式の中古車を買う方に覚えておいてもらいたい知識として、新車の塗装技術や洗車機、部品量販店で売っている手軽なメンテナンスグッズが進化しています。
古い車とは違ってワックスなどの手入れを一切しなくても、塗装が剥がれ落ちるような劣化をすることは滅多にありません。
高額なボディコーティングをして数年後の状態に満足する方が多いですが、これはコーティングの恩恵だけではなく塗装技術の進化が大きく関係しています。
また、洗車機やスプレーして拭き取るだけの手軽なメンテナンスグッズも進化しています。
白系や銀系など塗料の強いボディカラーの車であれば、洗車機でのメンテナンスを繰り返しても洗車傷で見苦しい状態にはなりませんよ。
高性能の洗車機を使って2,000円前後のコースでコーティングまで行うだけでも、艶のある綺麗な状態を維持することが可能です。
日頃の洗車やメンテナンスをすることが面倒な理由でボディコーティングを施す方が多く見られますが、手洗い洗車やメンテナンス剤の塗布などの手入れができないのであれば、ボディコーティングをせずに洗車機中心のメンテナンスを推奨します。
メンテナンス費用を安くしたい場合は、洗車機のシャンプー洗車や水洗いコースで汚れを落とし、スプレーして拭き取るだけの液体ポリマー等を活用するとよいでしょう。
売る時のリセールやメンテナンス費の総コストを考慮した場合、ボディコーティングよりも手軽なメンテナンスを実践する方がお得です。
おすすめのコーティング
ボディコーティングをおすすめするシーンは、黒系やメタリックの赤・緑など小傷の付きやすいボディカラーを選んだ場合です。
塗装技術や洗車機等の進化によって、コーティングしなくても短期間で劣化するワケではありませんが、コーティングの有無で状態の差が出やすくなります。
特にブラック系のボディカラーは黒の深みが強いほど塗料が柔らかくなります。高級セダン等の黒を選ぶ場合はボディコーティングが必須だと考えるべきです。
白系をはじめ、その他の条件では洗車機を使ったメンテナンスの方が楽で、売る時の査定価格が大きく変わるほどの差が出ません。
洗車傷の付きにくい色の場合は、少しでも艶のある状態を維持する目的を持つ。もしくは自己満足できるかがボディコーティング施工を検討する際のポイントです。
続いてボディコーティングの種類について解説します。
コーティングは大きく分けて水を弾いて水滴が転がる撥水タイプと水を流す親水タイプがあり、オススメは親水タイプです。
撥水タイプはコーティングが効いていることを実感しやすいですが、濡れた状態ですぐに拭き取るか走行して水滴を落とさないと、水滴がレンズのように太陽光を吸収して紫外線の影響を受けやすくなってしまいます。
また、水滴が残る特性からイオンデポジットが付きやすいデメリットがあるため、屋外駐車で保管する場合は撥水タイプを避けて親水タイプを選ぶ必要性が高いです。
親水タイプの場合、コーティングが効いていることを実感しにくいデメリットがあるのみで、塗装の保護能力や耐久性などの機能面で大きなデメリットはありません。
おわりに
ボディコーティングは熟練したスタッフが施工する必要があり、中古車の場合は汚れを落とす作業を含めて1日以上の作業時間を要することがあります。
職人の技術と手間を考慮すれば妥当な費用ですが、将来高く売る目的での利用価値は低いです。
もちろん未コーティングに比べてボディコーティングをすれば幅広いメリットを得られます。
ただしボディコーティングした場合でも、その後のメンテナンスが重要になることを覚えておいてください。
幅広いユーザーを見てきた業界人の視線としては、車を小まめに手入れできる方はボディコーティングの有無を問わず艶のある状態を維持して将来車を高く売っています。
小まめなメンテナンスをしている方であれば、WAXが不要になる利便性などボディコーティングをした恩恵を感じやすいでしょう。
車の小まめな手入れを怠ってしまう方は、数年後にコーティングの効果を全て失ってしまい、新車時にコーティングしなかった場合と大きな差がない状況に陥ってしまうケースが多いです。