変化する中古車輸出の需要

輸出する時の港の様子

「日本車が海外で人気」

「輸出需要によって一部の車種が高く売れる」

車好きの人や売却を検討している方は、こうした話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
2018年の中古車輸出台数は1,326,619台で2年連続前年比を上回っていて、前年比約50%減になった2009年(675,858台)から上昇傾向が続いています。

直近のデータを見れば高い輸出需要を確保していることに変わりはなく、現在も成長を続けていると捉えることもできます。
しかし、一部の地域では規制強化によって輸出台数が激減している事例もあり、2019年になってからも規制強化に関するニュースが相次いでいます。
将来的に日本からの中古車輸出市場は衰退していく可能性があるのか、幅広い角度から調査してきました。

主要な輸出規制情報

ミャンマーの右ハンドル輸出規制

2011年後半に中古車輸出を解禁して、一気に日本車輸出のトップマーケットになったミャンマーですが、2018年7月に右ハンドル車の輸出が禁止になりました。
実質的にミャンマーへの輸出は激減したものの、一部の輸出業者はタイ経由でミャンマーへ右ハンドル車の輸出を続けていました。
しかし、2019年12月には新しい規制によってタイ経由の輸出も締め付けられる見込みです。
これまで、ミャンマーではアルファードなど一部の車種が日本の新車価格2倍以上で流通する状況になっていて、ミャンマー政府は国内での新車需要を高めようとしています。
将来的にミャンマーへの中古車輸出需要は大幅に低下していくでしょう。

パキスタンの大規模規制

パキスタンは日本からの中古車輸出における主要な国として長年君臨しています。
業者用オークション会場でもっとも多い外国人はパキスタン人で、日本国内にはパキスタン人による大規模な中古車輸出グループが作られています。
パキスタンへの輸出はもちろん、パキスタン経由で中東やアフリカへ輸出する需要が高いのが特徴です。
パキスタン本国では、従来の5年落ち以内なら輸入できる規制を3年落ち以内に変更するなどの輸入強化を行ってきましたが、商用輸出の需要が支えてきました。
しかし、2019年に入って実質的にパキスタンにおける商用輸出の規制を禁止する法律が施行され、パキスタンへの中古車輸出需要が激減しています。

スリランカのハイブリッド車増税

スリランカは日本製のハイブリッド車の人気が高く、2018年は過去最高の7万台の中古車が輸出されました。
しかし、2019年に日本車のHVカーを実質的な狙い撃ちにした増税が行われました。輸出自体は継続して行われていますが現地での販売台数は減少傾向です。

南アフリカの断続的な規制強化

南アフリカは日本車の輸出を禁止していますが、アフリカ大陸全般に転売する商用輸出が活発な地域です。
2010年以降、南アフリカでは度々、日本車の輸入規制を敷いてきましたが、輸入業者は幅広い方法で規制の網をかいくぐって安定した需要を確保してきました。
直近の輸出台数も安定していますが、将来的には南アフリカおよびアフリカ全般への輸出需要が減少していく懸念があります。

輸出規制が中古車買取相場に直結するとは限らない

ご覧のとおり、直近1~2年で見ても多数の輸出規制が敷かれています。
特にミャンマーへの右ハンドル禁止の規制は市場に大きな影響を与えました。
しかし、ミャンマーのケースを見ても規制強化でタイへの輸出台数が増加するなど、中古車の海外輸出は幅広い抜け道があります。
また、日本車は世界各国で人気があり、安定成長を続けている地域があるため、一部の地域で輸出台数が減少しても全体に与える影響は軽微です。
輸出規制に関するネガティブなニュースが出たとしても、すぐに中古車価格に影響を与えるとは限りません。

買取価格やオークション相場への影響は?

中古車が売られているイメージ

著者の知人の現役中古車買取店の店長をはじめ、複数の業界人に聞き込みを行ったところ、国内需要の増加もあって全体的な買取相場は安定しているそうです。
一方で、ハイエースやランドクルーザーなど輸出需要が高い車種には若干の影響が出ています。
オークション相場は従来と変わらぬ高値で取引をされていますが、買取業者を相手に営業で回っている外人バイヤーや輸出業者の提示する条件には変化があるようです。

つまり、相次ぐ輸出規制によって、これまで輸出需要の高い車種の買取を得意にしていた業者の一部で変化が出ています。
過去に良い条件を提示された経験がある業者や、輸出需要の高い車の買取をアピールしている業者を利用する際は注意してください。
輸出に限定すれば中古車業界は大きく動いているので、海外輸出需要の高い車の売却は、今まで以上に複数社から査定を取る重要性が高まっています。