決算時期に新車値引きが増える理由

スズキの決算

新車購入は時期によって値引きが異なり、もっとも期待できる時期は2~3月の本決算。次いで9月の上半期決算です。
決算時期を狙えば安くなることは有名ですが、なんで決算時期だけ優遇されるのか理由をご存知でしょうか? 元業界人だから分かる車業界の仕組みを解説します。

3月の決算はメーカー決算

3月末に本決算を行うのは基本的に自動車メーカーです。
販売会社は一番動きが活発になるメーカー決算時期を避けているケースが多いです。
たまに販売店が「今月は販売会社の決算なので安くなります」と営業トークすることがありますが、販売店の決算で条件を優遇することは基本的にありません。

メーカーは上場していて、新車販売台数も公表しています。(登録台数は自販連が集計して公表)
メーカーはランキングなどの人気の高さや業界順位を重要視しています。
「トヨタが世界一になった」、「日産が世界2位」、「マツダが急成長」こうしたニュースが出ると、そのメーカーを買おうとする人が増えます。
どの車種を買おうか迷っている時に、そのカテゴリーで売れている車種を重視する人も多いです。
多くの人に選ばれている実績が信頼に繋がるので、メーカーは決算や年間販売台数を高めようとして決算に追い込みをかけます。

実際に車を売るのは販売会社です。
そこでメーカーは販売会社に対して、特定の車種に対しての値引き補助(業界用語で「対策」)、3月末までに登録した台数に応じたインセンティブを支給しています。
大きな販売店では、モータープールを用意して、決算などメーカーからのインセンティブが増えると自社で大量購入して一度登録をかけてしまいます。
登録済み未使用車が流通しているのは販売店がモータープールを活用した自社購入が影響しています。

つまり、メーカーが値引き補助(対策)とインセンティブの支給を積極的に行うことで決算期は値引きが増えます。 販売店は自社購入した在庫を早く捌きたいので、モータープールにある車(注文済みの車含む)に該当した場合は特価販売を行っていて、決算期はモータープール在庫が増えるので大幅値引きが出やすくなります。

本気決算と本気ではない決算がある

メーカーや車種のカテゴリーでトップ争いを繰り広げている場合は、決算で特別条件を出してなんとしても1位の称号を取ろうとメーカーが本気になります。
決算期によっては、今期は絶望的で決算前に悪あがきをしても変わらない。反対にライバルを圧倒するリードをしていて世界ランクの変動も期待できない場合は、決算でもそこまで本気を出しません。
むしろ、今期の売上を大幅に伸ばすよりも来期の売上や販売実績に回そうと温存することもあります。
決算は全てのメーカーと車種で特別条件が出るとは限らないことを覚えておきましょう。

消費者が過剰な反応をしている

決算期でお得に車を買おうとする女性たち

決算期は車が安くなるのは有名な話で、そこを狙って行動する人も多数います。
メーカーや販売店は決算で詰め込まなくてもいいと思っている場合でも、お客が「決算だから安くして」と言ってきます。
決算で買おうとする需要が高まれば、販売店はそれを見過ごすワケもなく、決算フェアを開催して集客を強化します。
ただし、メーカーが対策(販売会社への値引き補助)や登録台数に応じたインセンティブを用意していなければ値引き枠が大幅に増えるワケではありません。
他社も値引きを積極的にするので対抗するために限界値引きが出やすくなりますが、根本的な値引き枠が増えているとは限りません。
決算期間中でも通常通りの値引き条件で購入している人が多数います。

中古車市場も盛り上がる

上場企業や大手チェーンで業界順位を気にするような会社は決算や年末に特別条件を出して販売台数や買取台数を稼ごうとすることもあります。
全体の中では、決算の数字を良く見せようとするのは一部に限られていて、中古市場は決算だからといって条件を良くすることは少ないです。

中古市場でも3月など新車メーカーの決算期が盛り上がる理由は、新車販売台数が増えると車検前の代替需要も高まるからです。
車検のタイミングで代替する需要が高く、必然的に2月、3月など決算期前後は中古車の流通量が増えます。
中古車から中古車に乗り換える人もいますし、決算期に中古市場が活発になることを見込んで行動する人もいます。
車を売る場合は代替需要が増える決算よりも少し前の1月から2月上旬くらいに売却手続きを進めると条件交渉しやすくなります。

ただし、買取に強い中古車業者は決算期になると売れる車より仕入れる車の方が多く、置き場が一杯になることがあります。
中古車の置き場が少なくて在庫の増える時期だと、特別条件を出してまで買取しようと考えず、利幅の取れる条件しか対応してくれないこともあります。
つまり、中古車は決算期や決算前だからといって高く売れるとは限りません。業者によっては中古車の動きが少ない閑散期の方が条件を優遇することもあります。
季節ごとの変動はどこの業者にもありますが、売るのが有利になる時期は業者によって変わってきます。
業者ごとで季節による対応状況が変わるので、売ろうとしているタイミングで複数社の比較をする重要性が高いです。